はじめは、みんな沈んでいた

今日、八月十四日は「水泳の日」なのだそうです。 もとは「国民皆泳の日」という名前だったと知りました。 泳ぎを覚えることは遊びではなく、いのちを守る技術なのだ、 という考え方から始まった日らしい。
お盆の真ん中にこんな話をするのも変ですが、 僕はこの「皆泳」という言葉が妙に忘れられませんでした。 みんなが泳げるようになる。うまい人だけが泳ぐのではなく、全員が。
覚えていない、ということ
自分が泳げるようになった日のことを、覚えているでしょうか。
僕はよく覚えていません。ただ、覚えていないということは、 ある日いきなり泳げたわけではない、ということでもあります。 顔をつけて、沈んで、水を飲んで、また立って。 その繰り返しのどこかで、体が勝手に浮いた。 上達した瞬間の記憶がないくらい、ゆっくり浮いたのだと思います。
舞台も、まったく同じだと思っています。
いつ泳げるようになったのか、言い当てられない
第1回公演『佐賀の夜の夢』の稽古場にも、最初は声の出ない人がいました。 人前で歌ったことがない、という人がいました。 その人たちが本番で舞台に立ち、約4,200名のお客様に足を運んでいただいて、 黒字で幕を下ろすことができた。 けれど、あの人たちが「いつ泳げるようになったか」を、僕は言い当てられません。 気がついたら浮いていた、としか言いようがないのです。
沈んでいる期間があるから、浮く日が来る。
だから僕は、体験レッスンに来てくださる方に 「うまくなってから来てください」とは絶対に言いません。順番が逆です。 沈んでいる自分を人に見せられる場所があるかどうか。違いは、たぶんそれだけです。
落ちても大丈夫な場所を
2027年9月26日、SAGAアリーナ。 第2回公演『ピーターパン 〜ネバーランドSAGA〜』を、昼夜2公演で上演します。 舞台に立つのは、佐賀の県民、約300人。
ピーターパンは、空を飛ぶ話です。 でも飛ぶ前に必要なのは、飛び方の練習ではなくて、 「落ちても大丈夫な場所」の方なんじゃないか、と最近は思います。
ミュージカルアカデミーの体験レッスンを受付中です。 泳げなくていい。沈んでいい。 水に入るところまでを、こちらで用意して待っています。
もっと遠くへ行けるのではないか。