一度で、黒くはならない

九月六日。今日は「黒の日」だそうです。 「く(9)ろ(6)」の語呂合わせで、着物の黒染めにたずさわる方々が決めた日だと聞きました。
黒染めのことを、私はよく知りません。 ただ以前、一度浸けただけではあの深い黒にはならない、という話を聞いたことがあります。 染めては乾かし、また染める。それを重ねて、ようやくあの色になるのだと。
初日から声の出る人は、いません
その話を、稽古場にいるとよく思い出します。
初日から声の出る人は、いません。ひとりもいません。 初めて来た人は、たいてい自分の声が小さいことに自分で驚いて、少し赤くなって帰っていきます。 私も昔そうでした。
そして半年たつと、同じ人が、同じ部屋で、後ろの壁まで届く声を出しています。 その途中に何があったかというと、特別なことは何もありません。ただ、来た回数が増えただけです。
濃さは、回数でできている
上手いという言葉を、私たちはよく才能の話だと思ってしまいます。 でも稽古場で見ているかぎり、あれはほとんど回数のことです。
何回その場所に立ったか。何回、下手なまま人前で声を出したか。 濃さは、そうやってできていきます。
だとすると、「まだ何もできないので」というのは、入らない理由にはならないはずなんです。 むしろ、薄いところからしか始まりません。最初から黒い布は、どこにもありませんでした。
あの舞台の人たちも、同じでした
第1回公演『佐賀の夜の夢』には、約4,200名のお客様に来ていただき、黒字で幕を下ろすことができました。 あの舞台に立った人たちも、はじめは全員、声の出ない日曜日から始めています。
第2回は、2027年9月26日、SAGAアリーナ。昼と夜の二回公演です。 募集ページには、舞台に出る人・手伝う人・観に来る人という、三つの入口を並べました。 ミュージカルアカデミーでは、体験レッスンも受付中です。
田んぼの稲が、すこし色づいてきました。夜は、網戸だけで眠れるようになりました。
ひとつだけ、うかがってみたいことがあります。 はじめは全然だめだったのに、気づいたら続いていた。そういうものが、何かありますか。
もっと遠くへ行けるのではないか。