同じ台本を、三百人が読む

九月八日。今日は「国際識字デー」という日だそうです。 世界には、いまも文字の読み書きを学べていない人がたくさんいて、 そのことを考えるための日だと聞きました。
文字が読める。私たちはそれを、あまりにも当たり前のこととして暮らしています。 でも、稽古場にいると、「読める」というのは案外いくつもの段階があるのだな、と思わされます。
読み合わせ、という時間
うちでは、稽古のはじめのころに「読み合わせ」という時間を取ります。 みんなで輪になって、台本をただ声に出して読んでいくだけの時間です。 演技もしません。動きもつけません。座ったまま、順番に読む。
これがおもしろいんです。 黙って目で追っているときには、その一行は「意味」でしかありません。 ところが声に出したとたん、それは誰かの言葉になります。 同じ「うん、わかった」という一行を、十人が読めば十通りになる。 強がって言う人、しぶしぶ言う人、心底うれしそうに言う人。 誰も演技指導などされていないのに、そうなる。
文字は、声を待っている
書かれた言葉は、それ自体では半分しか完成していない。
読む人がそこに息を入れて、はじめて残りの半分が立ち上がる。 だから、同じ台本を三百人が持てば、三百通りのネバーランドができます。 誰かの真似ではない読み方が、必ず一人にひとつある。
「演技をやったことがないので」とおっしゃる方に、私はいつもこの話をします。 経験がないことは、入らない理由になりません。 あなたの読み方は、まだ世界の誰も聞いたことがないからです。
九月の佐賀は、朝の草がまだ露で濡れていて、田んぼの色がゆっくり変わりはじめる頃です。 夕方の教室に入ってくる風も、少しだけ涼しくなりました。 蝉の声と虫の声が、まだ入れ替わっている途中です。
ひとつだけ、うかがってみたいことがあります。 声に出して読んでみたら、印象がまるで変わった、という文章はありますか。
その台本を、次に読む人へ
私たちは2027年9月26日、SAGAアリーナで第2回公演 『ピーターパン 〜ネバーランドSAGA〜』を上演します。 第1回『佐賀の夜の夢』には、約4,200名の方が来てくださいました。 もっと遠くへ行けるのではないか。それが、私たちの合言葉です。
その台本を、次に読む人を探しています。