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担当スタッフ

訳せないものが、届く

稽古場の様子

きょう九月三十日は「世界翻訳の日」、国際翻訳デーなのだそうです。 聖書をラテン語に訳したヒエロニムスという人の命日にちなんで、国際翻訳家連盟が定めた日だと知りました。

翻訳、という言葉を見て、私は稽古場のことを考えていました。

稽古場は、翻訳の現場です

私たちの稽古場では、毎日おそろしい量の翻訳が起きています。 たとえば演出が「ここは、もっと遠くを見て」と言う。その「遠く」は、地図の上の距離ではありません。 だからその一言は、そのままでは伝わらないのです。

受け取った人が、自分のからだのどこかに置き換えて、はじめて動きになる。 首の角度になる人もいれば、息の深さになる人もいます。 同じひとことが、三十人いれば三十通りに訳されていきます。

何と言えばいいのか、分からない

先日の稽古で、こんなことがありました。 ある子が「この気持ちは、何と言えばいいのか分からない」と言ったのです。 台本のその行に台詞はなくて、歌に入る前の数秒の間だけがある場面でした。

その子はしばらく黙って、それから小さく息を吸って、歌に入りました。 何も説明しませんでした。それなのに、見ていた私たちには伝わってしまったのです。

訳せなかったものが、そのまま届く。舞台というのは、たぶんそういう場所です。

客席が持ち帰るのは、あらすじではなく

第1回『佐賀の夜の夢』には、約4,200名の方が足を運んでくださり、収支も黒字で終えることができました。 ありがたいことです。

けれど、あの日客席にいた方が持ち帰ったものは、あらすじではなかったと思います。 うまく言葉にならないまま、しばらく胸に残った何か。 あれを生むために、私たちは長い時間をかけて稽古をしていたのだと、いまは思います。

オーディションで見たいのは、上手な説明ではありません

第2回公演は『ピーターパン 〜ネバーランドSAGA〜』。 2027年9月26日、SAGAアリーナで昼夜2公演です。 出演オーディションは、この11月を予定しています。 ミュージカルアカデミーの体験レッスンも、いま受付中です。

舞台に立つ人が約300人、支える人が約200人、客席で観てくださる方が約12,000人。 入口は三つあります。 オーディションで見たいのは、上手な説明ではありません。 言葉にならないものを、そのまま持ってきてくれる人です。

ひとつ、うかがってみたいことがあります。 あなたが最近、うまく言葉にできなかった気持ちは、どんなものでしたか。

もっと遠くへ行けるのではないか。九月の最後の日に、そう書いておきます。

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